同じ量のたんぱく質でも、朝に寄せた場合と夜に寄せた場合とで筋肉の増え方に差が出た——早稲田大学などの研究チームが2021年に報告した内容だ。朝食は納豆1パックで済ませ、夜に肉をどっさり食べる。日本の食卓のごく普通の配分が、体づくりの観点からは逆立ちしているかもしれない、という話になる。
総量が同じでも、朝に寄せたほうが筋量が伸びた
研究を発表したのは、長崎大学の青山晋也さん、早稲田大学の柴田重信さん、同・金鉉基さんらのチームで、2021年7月に学術誌『Cell Reports』に掲載されている。
マウスを使った実験では、1日のたんぱく質の総量を同じにしたうえで、朝食側に多く配分した群、夕食側に多く配分した群、朝夕で均等にした群を比較した。発表によれば、朝食に多く摂取した群で筋量の増加が促進されたという。さらに体内時計をつくる時計遺伝子が働かないマウスでは、この朝の優位が現れなかったとも報告されている。時間帯そのものではなく、体内時計が関わる仕組みだという裏づけになる。
人を対象とした調査もあわせて行われており、高齢女性を対象に3食のたんぱく質摂取と筋機能を調べた結果、朝食でのたんぱく質摂取量の比率と骨格筋指数が正の相関を示したとされる。マウスの結果と人の相関が同じ向きを指した、という構図だ。
もちろん相関は因果ではないし、これ1本で食事の常識が塗り替わるわけでもない。ただ「いつ食べるか」を変数として扱う時間栄養学という領域が、体づくりの話に本格的に入ってきたことは押さえておきたい。
「量は足りている」で終わらせていた話に、時間軸が入った
たんぱく質1日65gの記事では、国が示す目安の量を扱った。摂取基準が答えるのは「どれだけ」であって、「いつ」ではない。今回の報告が面白いのは、総量という一次元の議論に、配分という二次元目を足したところだ。
素直に振り返ってみると、多くの人の食卓は夜に偏っている。朝は時間がなくて糖質だけ、昼は麺類で済ませ、夜に焼肉や刺身でまとめて取り返す。1日の合計だけを見れば目標を満たしているのに、体のほうは満たされていないという事態が起こりうる。頑張り屋ほど朝を削るので、この偏りは真面目に働く人ほど強く出る。
朝食に手をかける文化が薄れて久しいなかで、体内時計の側から「朝を軽く扱うと損をするかもしれない」という指摘が出てきたのは、時代の巡り合わせとして興味深い。社会的時差ボケの記事で扱った起床時刻の乱れも、体内時計という同じ土俵の話だ。朝の光、朝の食事、朝の起床時刻——時計を合わせる道具は、どれも朝側に集まっている。
明日の朝、たんぱく質を「1品」足す
- 朝食に、たんぱく質の1品を追加する。 卵1個、納豆1パック、ヨーグルト、豆乳。量を倍にする話ではなく、夜に寄せていた分を朝へ振り分ける
- 夜の量を、少しだけ朝へ移す。 総量を増やすのではなく配分を変える。これなら費用も手間もほとんど変わらない
- 朝食を抜いている日は、まずそこから。 何を食べるかより、朝に食事の時刻を作ることが先になる
持病があって食事の内容に指示を受けている人は、自己判断で配分を変えず、主治医や管理栄養士に相談してから試してほしい。


