疲れを取るために旅に出る人が、10万人調査で33.0%に達した。5年前は27.4%だから、5.6ポイントの増加になる。夏の終わりの特急列車は、旅行鞄より仕事鞄の人のほうが多い。それでも窓際の席の人はみな、同じように外を眺めている。あの時間に名前がつきはじめた、という話だ。
伸びていたのは、城めぐりと鉄道旅だった
調査したのは一般社団法人日本リカバリー協会で、2026年8月7日の発表による。全国の20〜79歳、男女各5万人の計10万人を対象に2026年5月に実施し、都道府県・年代・就業状況で重みづけをかけている。疲労のリカバリー手段として旅行を挙げたのは男性31.2%、女性34.7%。2021年からの伸びは男性6.3ポイント、女性4.9ポイントだった。
旅先での過ごし方の内訳がまた興味深い。温泉が36.3%、ウォーキングやジョギングが36.1%、ドライブが28.8%。5年前からの伸び率で並べ替えると、上位は城めぐりの3.82倍、鉄道旅の3.71倍、パワースポットめぐりの3.68倍になる。派手な体験ではなく、歩く・眺める・移動するという地味な行為ばかりが伸びている。
20代は21.1%、70代は47.9%。若いほど旅で回復していない
この発表でいちばん引っかかったのは、世代の落差だ。旅行をリカバリー手段にしている人は20代で21.1%、50代31.7%、60代41.5%、70代47.9%。歳を重ねるほど、きれいに増えていく。
疲れているのはどちらかといえば若い世代のはずである。それなのに、旅で回復している割合は年長世代の半分以下にとどまる。時間と資金の制約は当然あるだろう。ただ、それだけでは説明しきれないというのが私の読みだ。若い世代の旅は、予定が詰まりすぎている。何時に何を見て、どこで何を食べ、どう撮って残すか。工程表になった旅は、休みの顔をした二つ目の仕事になる。密度を上げるほど、帰ってから疲れる。
年長世代の旅がリカバリーとして機能しているのは、余白を持ち帰る旅の仕方を身につけているからだろう。湯に浸かる、駅で列車を待つ、車窓を見る。何も生産しない時間の比率が、単純に高い。
旅が強いのは、休みの種類をまとめて摂れるから
日本リカバリー協会は休養を休息・運動・栄養・親交・娯楽・造形/想像・転換の7種で捉えており、今回の発表もこれらを組み合わせた旅を「複合型休養」と呼んでいる。分類そのものは休養学の記事で紹介したとおりだ。
この枠に旅を当てはめると、効率のよさの正体が見えてくる。温泉は休息、朝の散歩は運動、土地のものを食べれば栄養、同行者との会話は親交、城や美術館は娯楽と造形/想像、そして移動そのものが転換にあたる。普段の休日には1タイプしか踏めていない人が、旅先では半日で4つも5つも踏んでしまう。伸びていたのが城めぐりや鉄道旅という地味な行為だったことも、ここでつながる。効いているのは刺激の強さではなく、種類の多さのほうだ。
とすれば、旅の価値は「非日常」という曖昧な言葉ではなく、休みの構成を一気に組み替えられる点にある。裏を返せば、同じことは近所でも起こせる。積極的休養の記事で書いた「動いて回復する」という発想も、この構成の話に含まれている。
次の休みは、行き先より「何タイプ入るか」で選ぶ
- 旅程から予定を1つ削り、何もしない半日を作る。 削った分だけ、旅は消費から回復に寄っていく
- 日帰りでも、種類を3つ以上踏む。 電車で動く(転換)→歩く(運動)→土地のものを食べる(栄養)で、もう複合型だ
- 旅先の朝を、散歩に使う。 調査でウォーキングが温泉と並んだのは、偶然ではないと思う
長距離の移動や慣れない入浴は体に負荷がかかる。体調が万全でない日は無理をせず、予定を削るほうを選んでほしい。


